音楽を趣味とするコミュニティに属していると、必ず目にする標語がある。



「何が嫌いかじゃなく、何を好きかで自分を語れよ!!


ルフィの言葉として誤解されたまま広がったこの標語は多くの趣味に共通する理念だ。たしかに、それが一番幸せだし争いもなく平和な世界を築くことができるかもしれない。

ブログも同じだ。何かを嫌いと書いても何も生まれない。そこからいろんな音楽に出会ってくれない。だから書かない人が多数だ。私が愛してやまない数多くのブロガーもみんなそういう。

彼らは皆「好きな事を書く」が信念にある。そしてそれはやはり疑いようのない真理のようにも思う。

しかし自分の場合は勝手が違う。

音楽好き同士でいると、どうしても好きなものが同じ人たちで集まりやすい。そして共感に次ぐ共感でどんどん意見が強化されていく。すると意外と外の世界が見えづらくなってたりするのだ。

具体例を出すと怒られそうなので某バンドAとする。Aはすごく界隈で根強い人気を誇り大型フェスではトリも務めるほど。ファン同士の結束は固く、そしてその規模は大きい。

しかし日本全体の大きな枠で考えると、いくら大型フェスでトリを務められるほどの人気があろうと、世間の認知度は低い。「え、まだやってたの?」とか言われる始末。それがマジョリティだ。しかしAのファンはそれを知らない(か気づかないふりをしている)。20年前の曲を未だに一番の盛り上がりとして使っている事をファンは了承しているが世間は冷たい目で見る。

つまり言いたいことは、好き同士であつまると一般層の意見が見えづらくなっていて、いつのまにか浮いた集団になりかねないということだ。それの何が悪いと言われたらそれまでだが、自分はそれが嫌だ。

自分の好きなバンドは自分さえ好きだったらいい、という考えはない。世間にどう見られているか、なんて思われているのか、どれくらい認知されているのか、それが知りたい。もっと言うと、自分の好きなバンドに興味ない人の意見が聞きたい。

これは完全な自分の趣味の話なので理解してもらおうとか押し付けるつもりはない。ただ純粋に、好きな人たちで好きって言い合ってりゃ楽しい!とは思えない人間なのだ。それは他人の評価が気になる弱々しい人間という意味ではなく、興味の方向が外向きなのだ。積極的に知りたいだけなのだ。

だから私は書く。興味のない音楽を。あまり知らない音楽を。だってそんなこと書いてる人いないじゃん。好きでもない音楽について真剣に語ってるブログなんてないじゃん。

もちろん自分にも好きな音楽はあるしそれを広めたいって気持ちはある。

でもそれと同じくらいに、自分の好きな音楽が他の音楽好きから(もっと言えば音楽に興味ない人たちから)どう思われてるのか知りたい。

ブログの鉄則は「自分が読みたい記事を書くこと」。だったら自分は興味ない音楽について書く。でもバカにしたりない知識でウソを書いたりはしない。ちゃんとインタビューを読んで音楽を聴いて、そこで気づいたことを書く。それだけのことだ。

「ほめないブログ」を自称しているのはそのせいである。決して悪口を言うためのブログじゃない。

そして、理解しなくて結構なので、このスタイルを「そういうのもありなのね」くらいで流してほしい。

そりゃ自分の好きなアーティストをチクチクとわけのわからない姑の小言みたいな文章でディスられたらちょっと不愉快かもしれないが、そこは一つ、

「へー、興味ない人ってそんな見方してるんだ」くらいのおおらかな気持ちで受け止めてほしい。贅沢かもしれないが、それが個人ブログの面白みではないだろうか。

「何を好きか」を語るのは、それが得意なブロガーにお任せする。ニッチなジャンルが好きな人、ライブに行くのが好きな人、アイドルが好きな人、それぞれの得意ジャンルを存分に語り尽くしている記事は実に面白い。

だったら一歩引いたクールな記事もあってもいいんじゃないか、そんな気持ちで日々更新しているのだ。