「紅い服の少女」「目撃者 闇の中の瞳」などを手がけてきた台湾のヒットメーカー、チェン・ウェイハオ監督がメガホンをとり、台湾や中国など東アジアや東南アジアに古くから伝わる風習「冥婚(めいこん)」を題材に描いたコメディ。うだつの上がらない警察官の青年ウー・ミンハンは捜査中に落ちていた祝儀袋を拾うが、冥婚の習わしで、若くしてひき逃げ事故で亡くなったゲイの青年マオ・バンユーと結婚をしなければならなくなってしまう。そのことに頭を悩ませつつも、ある事件の解決に向けて奔走するウー・ミンハンだったが……。「冥婚」は生者と死者が行う結婚のこと。台湾などの一部地方に伝わる風習の場合は、未婚のまま亡くなると遺族が本来ご祝儀を入れる赤い封筒「紅包」を道端に置き、その包みを拾った者が死者と形式上の「結婚式」を強要されるというもの。拒否すれば罰が当たり、不幸になると言い伝えられる。主人公の警察官ウー・ミンハンを台湾の人気モデルで俳優のグレッグ・ハン、ゲイの青年マオ・バンユーを「青春弑恋」「恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター」などで活躍するリン・ボーホンが演じた。
映画.comより
全体的にゆるい感じのコメディで、どことなく日本の映画っぽい映像の撮り方は親近感もある。ゲイに対して差別的な目を持ついわゆる”一般的”なマッチョな男性、ミンハン。そんなミンハンが祝儀袋を拾ったことで若くして亡くなってしまい成仏できないままでいるゲイのバンユーと結婚することになる。当然はじめは迷惑がってなんとか振り切ろうとしたりケンカもしたり気持ち悪がったりとドタバタ劇で描かれるが、事件の解決のお手伝いをしてくれるようになり、すこしずつお互い理解しあうようになる。
すごく新鮮な設定で、ゲイの差別的な視線の問題も、中国の古風な本人の意図を無視した婚姻制度の視点も、女性への性的な扱いに関する問題も含みつつ、説教臭くならず丁寧に描かれている。日本のラブコメを参考にしたような映像やBGMの使い方は懐かしさすらある一方で、中国らしいダイナミックさや展開のスピーディさと子気味良さは欧米の作風でもある。
グレッグハンとリン・ボーホンの二人のタイプの異なるイケメンはある意味でBL心をくすぐられる。女性警官役かつ映画のキーパーソンでもあるワン・ジンは調べたら作家あがりの俳優だそう。しかも俳優でもすぐに結果を出した実力派だそうで、インスタももう、そりゃすごい。
ほっこりしてみられるいい映画なので、ぜひ一人でも家族でも友達同士でも気軽に見てほしい一本。