カミラカベロが来日した時、とんでもなくエロいねぇちゃんがいたもんだとびっくらこいたのを覚えている。

元々グループで活動していたカミラは、脱退、ソロデビューを果たす。他のメンバーとは違いキューバを故郷に持つ彼女はその個性を生かしたラテンなノリをサウンドに盛り込み現在進行形で世界的大ヒット中。もう彼女かグレイテストショーマンのサントラかのどっちかしか聞かれていない。

彼女のグループ活動期間は4年ほど。フィフスハーモーニー自体がXファクターというオーディション番組での寄せ集めということもあり、脱退もそれなりにすんなり行われた。まだ21歳である。それぞれデビューのきっかけが欲しくて結成するのだが、やりたいことが見つかると脱退、なんてことはザラで、見渡してみれば近くにワンダイレクションとかいうわかりやすいも判例がある。もっと昔で言えばスパイスガールズだってそう。ソロデビュー化はある意味で自然な流れでありむしろそれを歓迎するべきだと思う。

一方日本を見渡すとその辺りの窮屈感が否めない。アイドルグループを脱退した後のソロ活動、というのは簡単ではない。その個人にそこまでブランドがないという問題もあるが、もっと根源的なものとして「出て行った奴が悪い方」という謎の空気感である。

little glee monsterのメンバー、麻珠が脱退した時も不仲説が飛び交い、彼女はソロ活動を行うこともなく現在も特に音沙汰はない。アイドルの脱退はつまり死を意味する。それは大御所になればなるほどだ。乃木坂46で卒業した人は誰もソロ歌手活動を行なっていない(卒業する目的がそもそも芸能界から遠のきたいという人も多いが)。AKBでの板野友美や前田敦子はソロデビューを果たしたがなかなか結果がついてこない。まぁそれはだいたい明確でアイドル時代から想像が容易につくようなスタイルに落ち着いたからである。安室奈美恵になりたい板野友美と松たか子になりたい前田敦子じゃ我々も引き受けられない。

AKB卒業組で真っ先に食い淵を見つけたのは篠田麻里子。自身のブランドを立ち上げ(現在は倒産)、NHKなどでも番組を持つなど安定感を見せた。大島優子はエレベーターで男性を嗅ぎ回ってはこき下ろすセクハラまがいを繰り返し、高橋みなみは持ち前の仕切り力で強引にあの甲高い声を駆使して番組をねじ伏せている。
もっともソロ活動がうまく言っているのは川栄李奈だろう。2018年3月時点で8社とのCM契約を交わし、ドラマの出演も控え、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。AKBの看板をそこまで背負う事なく羽ばたいた川栄は色の染まらない存在だったのでCMには引っ張りだこなのも頷ける。

ではカミラカベロはどこにいるのか。自身のルーツをきちんと打ち出し、アイドルグループに搾取される事なく才能ある人がその才能を発揮できる場所へと導くシステムは整っているのだろうか。欅坂46の平手の摩耗ぶりを見ているとそんな焦燥感にかられる。
日本の音楽プロデューサーは、とまとめるのもよくないが、特にアイドル業界において、アイドル達を真摯に考えている人は少ないように思う。つい先日、伊調馨のパワラ問題で会見を行った栄本部長の所属する至学館大学の会見において、谷岡郁子学長が「そもそも伊調さんは選手なんですか?」ととんでもない発言をしたことを思い出す。監督する側は下の立場の人間の”言いたくても言えない”空気感を最大限汲み取る必要がある。伊調馨の「私エコノミーでいいです」を「あ、そうなのじゃあエコノミーね。え?だって彼女あの時そう言ったもん」じゃあ困るのだ。「私ソロデビューしたいのです」とも言えず、いや、「私休みます」すら言えない環境下に置かせてなお「え?だって休みたいなんて言ってなかったじゃん」としらばっくれて搾取し続けるならこんなムゴい話はない。

日本ではあまりに行き着く先が奴隷しかなさすぎる。セルフプロデュースの道がない。幼い少年少女は優秀なサラリーマンを目指しアイドルを目指し日本国内で完結しようとする。というかその選択肢しか大人は見せない。

だめだ。カミラカベロやメラニーブラウンは生まれない。秋元康や渡辺淳之介を悪くいうつもりはない。むしろ秋元康にはただただひれ伏すしかないほどだ。だけれどカミラカベロが生まれないアイドル時代ならそれは変えて欲しい。卒業するアイドルがテレビ出演するたびマイクをステージに置いて去る演出ばかり繰り返すくらいなら、卒業後の未来の一つでも考えて欲しい。

卒業、それは別れじゃなくて

出会いの予感をくれる

ってZONEが言ってたじゃないか。