21世紀はだれでも世界と繋がれるグローバルな時代だ!!

と大げさに言っておけばなんかすごく意識の高いビジネスマンぽく見えるのではと日々たくらんでいるが、それが披露される機会はなかなかない。というかそもそも大したこと言ってない。

でもわかりきっているけれども改めて確認したいことではある。音楽の世界だって同じで、21世紀初頭から始まったYOUTUBEだって、その後のitunesもSoundcloudもspotifyもいつだって世界との国境を壊してきた。こんな島国にいる人間の作品をはるか数千キロ離れたアメリカ人に聴かせることだってたやすいことだ。しかも限りなく安価に。それぞれのハードルが低くなり、「おもしろければなんでもあり」になった時代は、才能あるものだけが生き残れる時代になってきた。かつてのメディアのごり押しも、視聴者はお見通しであり、大してよくもないミュージシャンはあっさりとそっぽを向かれてしまう。

 

となると登場するのは海外で先にヒットする日本人の存在だ。もちろん海外に移住して売れていくパターンもあるが、日本に在住しながら海外でヒットしてワールドツアーから先に始めちゃうみたいなことが起きる。それを人は「逆輸入」と呼ぶ。
例えば今でいえばSuperorganismは海外在住で売れたパターンにあたり、CHAIなんかは後者に属するだろう。こうやって日本よりも先に音楽に敏感な世界が注目して、ようやく日本が「今世界で売れてるらしいですよ!!!」と戴いた箔を喜ばしそうに高く掲げている。みっともない姿だなとは思うが、彼らにとって日本で注目されることは悪いことではないのでそっとしておく。

一方で、日本でまず名を挙げてから世界進出するタイプのアーティストもいる。むしろそれが正攻法である。従来のビジネスモデルを駆使して、あらゆるレーベルをまわって契約して事務所に所属し世界デビューをする。そんなことをしてきた人は数知れず。
ただ、その道は限りなく険しいものだった、特に20世紀においては。日本という音楽マーケットの豊潤さと、辺境の地の音楽など聴こうともしないアメリカンポップス至上主義に日本が入る隙間はなかったのだ。宇多田ヒカルだって、松田聖子だって、X JAPANだって挑戦したが、一部のマニアックなウケは獲得しても全米を揺るがすことはできなかった。

それは21世紀になった今もあまり変わらないかもしれない。でも確かに明らかな変化はある。以前よりも確実に世界に相手されている。私は、そんな絶望的に険しい道のりを進んでいる”正統派輸出バンド”(と名付けよう)を無性に応援したくなる。無理だって日本人にも笑われ馬鹿にされてもなお、リスクを冒して高みを目指すアーティストはやはりかっこいいのだ。ということで、改めて紹介するまでもないが、何組かリストアップしてみる。

 

ロックバンド

まず思いつくのはONE OK ROCK。やっぱり彼らは海外輸出勢の筆頭候補じゃないだろうか。ネットのスレなんかでは「オワコン」だとか「初期の雰囲気でよかったのに」とか「洋楽の真似」といった暴言が飛び交っているが、全くの見当違いだ。海外ではTwenty One PilotsやPanic! At The Discoらロックの人気アーティストが多く所属するレーベルFueled by Rameに入ってだけですごいが、世界ツアーを当たり前のようにこなしているのもすごい。ビルボードで圏内に入ったり、Linkin Parkのオープニングアクトを務めたり、エドシーランと交流したりと、力と知名度は確実につけている。
ジャンルもジャンルだし、そりゃ音楽ライト層のアメリカ人に聴いたってワンオクを知っているとは思えない。それにどこまで政治がもたらしているのかも未知数だ。過大評価はまだ早い。でもこの下火になったロックというジャンルでまだ伸びしろを残しているのは期待しかない。そしてすっかり日本が”来日”になっているのもおもしろい。

他にはMAN WITH A MISSIONなんかもそうだろう。去年の甲子園でのライブが記憶に新しい彼らも同様に、日本での活動はほどほどに、世界進出をめざした。最新曲ではFall Out Boyのボーカル・パトリックをフィーチャリングで迎えた楽曲「86 Missed Calls feat. Patrick Stump」をリリース。見た目のキャッチーさもあいまって人気を獲得しつつある。初期のダンスロックへの比重は少し軽めにし、それよりもメロウでヘビーなサウンドを重視した海外スタイルで、世界のフェスに出演している。なんとイギリスのレディングフェスにも出演経験あり。ほんとすごい。ダウンロードフェスじゃなくてだよ?(ダウンロードがしょぼいという意味ではなく、ジャンルに囚われなりよりポップなレディングに出ていることがすごいのだ)
メタルっぽい音楽鳴らし始めたときは「だっせえなやめとけよ」って思ってたのを反省したい。

他にも独特な世界観と完全に日本のロックの枠でとらえきることのできないTricotなんかも面白い存在だ。日本でのウケはそこそこだけど、海外からは熱視線を送られている。それは技術力もそうだけど、フックの多いメロに頼らず曲全体としての構成で完成度を高めているところが評価されているのだろう。雰囲気もその辺の大御所にひけを取らないくらいに成長していて、ワールドスタンダードなバンドに成長しているといえるだろう。

 

まだまだ海外で活躍しているバンドはたくさんいるが、日本で知名度を上げてから世界に行くバンドでひときわ目立つのはこの三組だ。

エレクトロダンス・ポップ

他のジャンルに目を向けると、パッと浮かぶのはPerfume。今年はコーチェラ(アメリカ最大級のフェス)にも出演し、いよいよ世界進出に拍車がかかってきた3人組。音楽はもともと中田ヤスタカが作っていることでも有名なのでそのクオリティの高さは定評があったが、映像面も含めて、彼女たちの演出に度肝を抜かれる外国人は多い。決してイロモノではなく、ひとつのアート集団として評価されつつある。

また、SEKAI NO OWARIも、End of the World名義で世界進出を狙う。いままでセカオワ名義でもアジア公演やフェスなどに参加し、確実にその規模を拡大させていたが、ここで名前を変更し、欧米にも参加しようという決意がみられる。事実、7月にはClean Banditを迎えた楽曲を披露し、海外アーティストとコラボすることで、知名度を獲得する方向性は間違いない。先日、星野源がそうしたように、この手法がおそらく今のセオリーなんだと思う。



ヒップホップ・ラップ

このジャンルはなかなか日本で認知されにくく、しかも世界に通用しづらい。日本人だから日本語でラップをしているし、向こうのシーンはあまりに流れが速くそして強大な敵が多いからだ。そこに果敢に攻めるには勇気がいる。それをトライしている一人がKOHHである。耳の早いリスナーからはさっさと注目され一気に知名度を挙げたKOHH。宇多田ヒカルが2017年に彼をフックアップした時にはもうすでに日本に地に足つけようという意思はなかったように思う。現在は世界を相手に活動しており、なかなかその成果は耳に入ってこないが、間違いなくブレイク前夜だと言える。最近ではエイジアンラップがトレンドなのもあり、追い風であることは言えるはずだ。事実、今年中国のラップグループHigher Brothersがリリースしたアルバムに参加しているKOHHの存在感を世界は無視できないはずだ。



もうひとつ挙げておきたいのがゆるふわギャングという二人組のヒップホップグループ。SALUの「夜に失くす」という曲でコラボしていることで有名なのだが、知っている人もいるだろう。知らない人はぜひこの機会に知ってほしい。見た目はちょっと怖いがゆるふわを自称しているので安心してほしい。

なんとNENE個人で言うとThe Chemical Brothersという大御所中の大御所であるエレクトログループにフックアップされている、という事実だけでなんとなくすげーってのは伝わると思う。ラップに抵抗感ある人でも、ゆるふわギャングの曲なら入りやすいのでぜひ聴いてみてほしい。

 

 

話をまとめると、いまこれだけ日本で知名度のある人たちが平気で英語で歌ったり、世界のトレンドに入ったり、なにより海外のホットなアーティストとコラボしたりできる時代になっていることは素直に驚く。10年前ですら考えにくいことだ。本当にもう壁はなくなりつつある。それぞれが海外志向になり、そしてそれを許す事務所がいる。ミュージシャンを傀儡人形化するのではなく、彼らのやりたいようにやらせることが最も理想的なビジネスモデルであることに気付きあるのだ。もちろんそのリスクも覚悟のうえだが、実力センス共に世界に負けず劣らずだからこそ挑戦できる。そして形になりつつある。

もう日本で胡坐書いてる時代は終わったのかもしれない。全員が世界を目指す必要はないが、限りなくその数は増え続けるのだろう。そしていつかグラミーにノミネートされたり、あるいは受賞したりする日も来たりして。そんな時を心から楽しみに待つ。