テレビの人からミュージシャンへ

aikoって気づいたらテレで「ボーイフレンド」歌ってる人、というイメージ。91年生まれの自分にはaikoのデビューを見届けるには幼すぎた。だから子供の頃はずっとaikoはよくテレビで歌ってる人、でしかなかった。それに関してはコブクロもゆずも同じ。
次第に音楽にのめり込むようになって一回ロックにハマって一回洋楽にハマって一回アイドルにハマったら一周してJ-POPが好きになった。ここまで遠回りしなくても良かったのに。でも大人になってそれなりに音楽聴いてやっと素人にでも理解できるaikoの異端さ。そして天才ぶり。ここ5年くらいで一気に彼女への愛が増した。どれ聴いてもキャッチーで、耳触りが程よく悪くて気持ち悪い。なのなスッと入ってこれがaiko節なんだと納得させられる、そんな音楽。ここ2年くらいチャンスがあればチケットを応募していたが今回ようやく当たったので大阪城ホールへ。
チケットをよく見ると”立ち見”で、これはスタンドとはまた違うことに入ってようやく気づく。ライブでこんな疎外感味わったの初めてだ。立ち見?なにそれ。。。と人気っぷりに絶句。余り券を買わされただけではないか。うん、仕方がない。。。



変わらない

aikoは昔から変わらない。音楽も詞も、衣装も。なにも変わらない。変わらないことに驚く。変わらない難しさを知っているから驚く。
ライブ途中で、嵐の活動休止の件について触れていた。この日、ライブ直前に嵐の活休が報じられたばかりで、まさにほやほやのビッグニュースを語っていた。「西野カナさんも休んじゃうし、続ける事って難しいんだなぁって感じた」と語るが、まさにaikoこそ、アルバムリリースとそのツアーだけをひたすらにこなしてきた継続型アーティストなので、その思いは複雑だろう。誰に楽曲提供するでもなく、コラボするわけでもない。交友は盛んだけどビジネスとしての交流は一切ない。まさに職人。山下達郎も恐れるレベルで職人。それでいて内容も衣装も変わらない。もはやホラーだ。
どうしてこんなに変わらないでいて進化できるのだろう。どうしてこんなにファンの新陳代謝がいいのだろう。それは彼女が図らずとも女のツボを押さえているからかもしれない。対話を重視し、ホールという大きな会場でもファンと積極的に喋る。マジで喋る。一対一で喋る。カフェかってくらい喋る。そして大した内容でなくてもなんとなくフワッとして終わる。それが許される。許されるのは女のツボを抑えてるからだ。
女は共感型だとよく纏められる。もうそれ以外ないってくらいに的確で例外がない。よくできた分析だ。このライブでもaikoが何かいうたびに周りの女性が「わかるー」「だよね笑」「ウチも笑」といちいち同意してくる。別に構わないが面白いなぁと思って眺める。aikoには「わかる」が詰まってる。でもほんとはわからないはずなのに、分かる気がするのだ。わかった気分になるのだ。aikoをわかろうなんて本来難しいけれど。例えばあの独特な音楽センスはまず無理だ。「お薬」なんてどうやったら理解できるのだ。まさに初期aikoのとがりまくった作品の一つだろう。あの曲の凄さがわかるにはおそらくもっともっと音楽に深い造詣が必要だ。
次にあのスタンスが無理だ。43になってあの少女感を出すのはその辺のオバさんには到底できない。aikoというスターだからこそなし得る力技だ。そして男は大体aikoに弱い。

年始に実家で姉とテレビを観てた時にaikoが歌っていた。姉はaikoのことをよく思ってなかった。理由がとりあえず面白かったのでここでシェアしておく。

「aikoってさ、全然キャラ変わらんやん、あれが嫌い。ああいうボーイッシュな感じ。40過ぎて2018年にまだそんなんやってるん?って。90年台後半から00年台前半はわかるよ。aikoが出てきた時ってさ、ちょうどああいうボーイッシュな女の子って流行ったから。SPEEDとか。でもさ、もうそんな時代ちゃうのにさ。まだずーっとそれやってる。ええ歳こいてまだボーイッシュなキャラで売ってる。時代錯誤感がむかつく」

らしい。なるほどそんなこと考えたこともなかったが、たしかに変わらない事は時代を跨ぐことにもなる。この日も前半はオーバーオールで登場し、いつもどおりボーイッシュなスタイルを決め込むaiko。フランクで飾らない姿勢が好感持てるのだが女に嫌われる女はこんなタイプまでなのかもしれない。



再確認する才能

aikoの人間性はひとまず置いといて、ライブはとても素晴らしかった。素晴らしかった、とは言うが、なかなかその素晴らしさを伝えるのは難しい。「どうだった?」と聞かれて「よかったよ」とは答えるが、この私の言う「よかったよ」の真意はきっと伝わらない。というか伝わるはずがない。aikoのライブは楽しい。おしゃべりが楽しい。盛り上げも楽しい。だけれど音楽自体にフォーカスすると、大御所ロックバンドのようなライブ映えするかと問われればそうでもない。歌唱力が抜群にあるわけでもない。エモいわけでもない。極論、極めて音源に近いライブをする(もちろんアレンジもあるが)。だが、だからといってつまらないわけでも実力がないわけでもない。むしろ、いつもテレビサイズでなんとなく観ているaikoが生バンドでこだわりの音響で本意気で歌うと、その楽曲自体の完成度が露呈される。本当に単純な感想として「ええ曲だなぁ」が溢(あふ)れてくる。「めちゃめちゃええ曲やないか」と再認識する。それは松任谷由実に近いのかもしれない。ライブパフォーマンスが凄いわけでもないが、ライブで聴くと楽曲の強度があんまりにも凄過ぎてたじろいでしまうような。松任谷由実のライブ見たことないが。そう考えると昨年の紅白歌合戦で松任谷由実が紅白のステージに登場した時に思わずaikoが涙したのはすごく意味を感じてしまうのだ。松任谷由実の出てきただけで全てを支配するオーラ。圧倒的な完成度でねじ伏せる力強さ。aikoにも十分それがあったように思う。
ライブで披露した曲は多くが2010年以降に発表されたものだった。00年台前半のヒットソングはほとんど歌わない。なのに成立してしまう。誰も不満を漏らさない(だろう)。知らない曲なのにワンコーラスで口ずさめるようになって、曲が終わった時には好きになってる。なんて凄い曲を作る人だとつくづく思う。
ライブ最後の「be master of life」は古い曲なのでおそらくライブの定番なのだろう、嬉しかった。aikoのライブどうやった?カブトムシは?キラキラは?とかつての彼女の名曲を想像する人にはあまり魅力的なセトリには見えないかもしれないが、むしろ近年の彼女のアルバムを聴いてる人からすれば「こんなにいい曲がたくさんあるならそりゃ往年の名曲は少し控えてもらってもしゃーない」と思わざるを得ないことに気づく。

ちなみにこの日のMCで得た情報は

・Mステの裏で発生練習してたらboyz Ⅱ Menに見られた。携帯いじってた

・コブクロに「姐さん休みなはれ」と言われた。

・紅白のオープニング映像で氷川きよしと夫婦役した。娘役の子に何聴いてるの?って聞いたら「米津とRADWIMPS」って言われた。

などだ。



まとめ

男が3割女が7割の比率だったけど男達の熱っぽさは凄かった。全然遠慮しない。「男子ー!」「女子ー!」の恒例のレスポンスも全然負けてない。すごくいいファン達だなとほのぼのする。理想的な姿だ。あとおじさんになってもaiko観に行ってもそこまでキモくないのが良い。アイドルだったら相当キツイ目で見られるしガールズバンドでもそこそこキモイと言われがちだが、そこは大衆性の勝利といったところか。

ラストの怒涛のメドレーも、ダブルアンコールの「ボーイフレンド」も最高だった。ハッピーアンドハッピーの大満足盛り盛りセット、迷ってる人は絶対行くべき。aikoオタクでもなんでもない自分が言うんだから間違いない。楽曲のクオリティにひれ伏されてこい。

セトリ

()内は通算アルバム数、アルバムタイトル、発表年の順に記載。同一アルバムからの楽曲で二曲目以降は通算アルバム数のみ記載。

1.熱 (5th 暁のラブレター 2003

2.ハナガサイタ(13th 湿った夏の始まり 2018)

3.遊園地 (11th 泡のような愛だった 2014)

4.透明ドロップ (11th)

5.お薬 (2nd 桜の木の下 2000)

6.予告 (13th)

7.もっと (12th May Dream 2016)

8.白い道 (10th 時のシルエット2012)

9.あなたと握手 (4th 秋 そばにいるよ 2002)

10.密かなさよならの仕方 (3rd 夏服 2001)

11.明日の歌 (11th)

12.ドレミ(10th)

13.あたしの向こう (12th)

14.ストロー (13th)

15.beat (9th BABY 2010)

16.ひまわりになったら (シングル「ハチミツ」のカップリング 1998)

17.夢見る瞬間 (12th)

18.ロージー (3rd)

アンコール

19.メドレー【ナキ・ムシ(1st 1999)/今度までには(4th)/プラマイ(12th)/えりあし(5th)/スター(7th 2006)/あした(1st)/恋のスーパーボール(10th)/花火(2nd)/Loveletter(11th)/二人(8th 2008)】

20.彼の落書き (5th)

21.be master of life (3rd)

ダブルアンコール

22.愛の病 (2nd)

23.ボーイフレンド (3rd)

1st 2
2nd 3
3rd 4
4th 2
5th 3
6th 0
7th 1
8th 1
9th 1
10th 3
11th 4
12th 4
13th 3
カップリング 1
計32曲(メドレー含む)