ロックは好きですか?私は好きです。小学生の頃にラジオで流れた「天体観測」、中学生の時に母が流してた「This Love」、高校生の時にクラスメイトに教えてもらった「Space Sonic」。私の人生は所々でロックが流れる。ロックが介入してくる。そこでたくさんのことを学ぶ。たくさんのことを知る。ロックは私にとって欠かせない人生のピースであり、これからもそうだ。
だけれど、ロックに縛られたくはない。ロックだけを愛しロックに溺れるのもカッコいいが、それを世間にばら撒きロックを押し付けようとする人にはなりたくない。私はそういう人を”ロックおじさん”と呼んでいる。言語化するのは難しいのだが、いくつかその例を挙げてみる。
- ロックが好きすぎてロック以外が聴けない
- 日本で言えばRCサクセションやTHE BLUE HEARTS、Hi-Standardのことを指し、こと2010年代のバンドをロックとして認めたがらない
- そのロックバンドの事を知りもしないのにバンドTシャツを着ることを許さない
- ロック好きな女の子がいたら過剰にチヤホヤする
ロックとは、という話にはしたくないのだが、ロックおじさんは簡単にロックの定義を決めてしまう。そしてもれなく今の若手ロックバンドはロックと認定されない。声が高い時点でロックではないとされる。顔ファンがいたらロックではないと決めつけてしまう。彼らのロック観はあまりに狭い。度々ツイッターでも話題になるのは、そのバンド知ってないとバンドTシャツ着てはいけない問題。好きな人からすれば知りもしないのに着られていることに腹立たしいのかもしれない。しかし、個人的にはそのバンドが好きすぎてバンドTシャツを普段の生活でも着る人の方が正直好きではない。ファッションもクソもないんだなぁと。とくにメタルはキツい。それなら、そのロゴをオシャレだと思ってオシャレに着こなすバンドのことを知らない素人の方がよっぽどセンスあるし素敵だと思うのだが。。
と思うのも理由がある。たしかに知識は豊かでありたい。音楽のことを深くたくさん知っている人に憧れる。でも”それだけ”の人間になりたくはない。他は全て犠牲にして、服装はダサいし髪の毛は整えもしないような音楽オタクになりたくない。テレビのこともちゃんと知って、政治も知って、芸能人のゴシップも語れて、ラフでカジュアルでみんなに溶け込めるような、むしろみんなよりもちょっとだけイケていたい。実際はイケてないけど。そこを諦めたくない。偏った人間にはなりたくないのだ。だからバンドTシャツを着るのには抵抗がある。ただ、バンド名が書いてなくてただのお洒落なTシャツは好んで着る。別に音楽オタクが恥ずかしいわけじゃない。そんなところで尖りたくないだけ。音楽が好きだってことは本当に仲良くなった人にだけ知ってもらえたらいい。あとはJPOPが好きな人、ロキノン系が好きな人、と好きに思ってくれればいい。話題は私が合わせる。
話はそれたが、こういう理由でバンドTシャツは大賛成なのだ。もちろん、好んで着ている人を否定はしないが。ただ、あまりにそれを誇らしげにツイートしてたくさんいいねを貰っているので、それって別にカッコいいとは思えないなぁ。と疑問に思うだけだ。
そしてもう一つ、ロックおじさんはロックが好きすぎてロック好きな女の子を発掘したら露骨に飛びつく。
未だに日本では「ロックンロール」を題材にした映画が定期的に制作される。「モテキ」や「ソラニン」「Beck」「少年メリケンサック」もそうだし、今度上映される「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」も再び阿部サダヲと可愛い女の子のタッグになっている。「少年メリケンサック」では宮崎あおい、「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」では吉岡里帆である。
監督の三木聡に恨みはないしむしろ大好きだ。時効警察とかインスタント沼で麻生久美子を思春期の自分に存分に浴びさせてくれた恩人だから。
とにかく可愛いロックに傾倒する女の子に幻想を抱く。そしてとことん可愛がる。”のん”こと能年玲奈はあのあどけなさと素朴さにロック好きという組み合わせが業界でウケると、CDデビューも出来たし、LINEのCMにも起用された。ちなみにそのLINE CMソングはフジファブリックの「若者のすべて」なので製作側の意図が見え隠れする。シシドカフカは甲本ヒロトとコラボする。モデルでドラマーはおじさんにとって歓喜の存在だろうから。二階堂ふみはロカビリーが好きだと聞くとミュージシャンは飛んでくる。何も悪いことはないが、その光景はちょっと素直に受け止められない。もちろん、彼女たちを非難するわけでもない。
ロックおじさんはいつまでもこの業界に居残る。ロック信仰は止まらない。世界でヒップホップが聴かれようと、日本のテレビではロックが愛され続ける。ロック好きな私からするとすごくありがたい状況のはずなのにどこかむずがゆい。
ロックは大好きだけど、「ロックこそが魂の叫びで音楽の神髄だ」みたいな言説を本気で信じてしまっている人に稀に出くわす度、動悸が激しくなる。今の自分で満足したくないし、今聴いている音楽で満足したくない。フェスではディッキーズとかの”制服”で動きやすさを確保するよりオシャレを求めたい。毎年のようにファッション誌のフェス特集は叩かれるけど、無個性な服装よりももっと遊びが欲しい。音楽のためなんかに他を諦めるわけにはいかない。
より深みのある人間を目指したいから、音楽だけにとらわれずに、もっと良い意味で世間と迎合し続けたい。と思う。