2019年においてこの作品を外すことはできない。アカデミー賞がすっかりNETFLIXの完成披露宴の様相を呈してきた中でも、この「マリッジストーリー」は別格だ。スターウォーズのシークエルトリロジーで敵役カイロレンを演じたアダムドライバーが旦那役を演じ、ブラックウィドウ役としても有名なスカーレットヨハンセンが妻役を演じている。

「イカとクジラ」「ヤング・アダルト・ニューヨーク」のノア・バームバック監督が、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーを主演に迎えて描いたNetflixオリジナル映画。女優のニコールと夫で舞台演出家のチャーリーが結婚生活に葛藤を抱え、離婚に向かっていく姿を描いたヒューマンドラマ。結婚生活がうまくいかなくなり、円満な協議離婚を望んでいた2人だったが、それまで溜め込んでいた積年の怒りがあらわになり、弁護士をたてて争うことになってしまう。ニコール役をヨハンソン、チャーリー役をドライバーが演じるほか、ローラ・ダーン、アラン・アルダ、レイ・リオッタらベテラン実力派俳優が共演。2019年・第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。Netflixで2019年12月6日から配信。日本では配信に先立つ11月29日から、一部劇場にて公開。

NETFLIXが勢いある作品を作っていく中で、これもその一つ。

結婚生活が破綻し始め、二人は互いに弁護士をつけ離婚調停に入る。その中で二人は直接言い合ったり、逆にわかり合おうとしたリ。大げさなことは起きないからこそ、二人の人生を追体験しているような気分になる。つぶさな感情の変化をこちらに読み取らせ、オーバーなリアクションの中の”愛”を感じ取る。

なにせあの二人の怒号が飛び交うケンカシーンは見もので、迫力に圧倒された。
本当の愛とは何か、は恋愛映画のよくある命題で、それは常に愛を求める途上の人たちのためにあるものだった。でも今回は、その愛から遠ざかろうとする人たちの中にみる本当の愛を垣間見る作品。もちろん安易に「離婚したがってるけど本当は愛し合ってる二人なんだね」と結論付けるつもりはないが、どれだけケンカして言葉ぶつけて弁護士同士で戦わせて子供の前で夫婦演じてやってみたところで、本当に二人が思っている感情はお互い口にだせない。出せないというか、できない。そのもどかしさがずっとある。

最後のチャーリーがニコールの書いた彼の長所が書かれた手紙を読んでいるシーンは何とも言い難い感情で溢れる。単純化できないけど、そこに書かれていることはまぎれもない愛の断片だったからだ。その愛しさと理解と戻らないものへの郷愁と、色々混ざった感情があそこでこぼれていく。実によくできた作品だなとしみじみ感じる。

スカーレットヨハンセンは気の強い女性のイメージがあって、ちょっと個人的に警戒心があったんだけど、今作でそんな偏見も解けて。なにせアダムドライバーがよかった。なんだろう、きっと男ってああいう不器用さに惹かれるところあると思う。日本でも差、不器用な男な高倉健が人気だったじゃない。うまく立ち回れないし、ついカッとなっちゃうけど心はピュアだったりするあの感じ。まあそれは女性にしてみたらいい迷惑なんだろうけど。