テレビでノーカット放送されると聞いて、せっかくだし見てみようと思った。期待は一ミリもしていないけど、観てみない事にはわからない。

日本アカデミー賞の作品賞にノミネートされ、主演男優賞にGACKTがノミネートされている。さぞかし大傑作なのだろう。

「パタリロ!」で知られる漫画家の魔夜峰央が1982年、当時自らも居を構えていた埼玉県を自虐的に描いたギャグ漫画として発表し、30年以上を経た2015年に復刊されるとSNSなどで反響を呼んだ「翔んで埼玉」を、二階堂ふみとGACKTの主演で実写映画化。かつて東京都民からひどい迫害を受けた埼玉県民は、身を潜めてひっそりと暮らしていた。東京都知事の息子で、東京のトップ高校である白鵬堂学院の生徒会長を務める壇ノ浦百美は、ある日、アメリカ帰りで容姿端麗な謎の転校生・麻実麗と出会う。百美は麻実に淡い恋心を抱き、互いに惹かれあっていく。しかし、麻実が埼玉県出身であったという衝撃の事実を百美が知ってしまい、2人は東京と埼玉の県境で引き裂かれることとなってしまうが……。二階堂が男性である百美役をGACKTが麻実役をそれぞれ演じる。監督は「のだめカンタービレ」シリーズ、「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹。

結果から言えば、アカデミー賞を取るような作品では全くなかった。GACKTはただのGACKTだし(役がGACKTに合わせているだけ)、実に話題性だけの作品だった。これは映画ではなくスペシャルドラマにすぎない。映画と呼べるほどのまとまりとストーリーがなかった。

海際のシーンでの暴れん坊将軍感ある撮影方法と画質(色合いも)など、細部へのこだわりは感じるが、基本的にただのコメディでしかない。漫画であるならそれは面白い企画であり奇抜な展開とおもしろいワードチョイスだと手放しでほめても良いが、これが映画という作品かと問われると、全くそうではないとしか思えない。

あとゲイ描写が無意味過ぎて悪趣味。あんなに差別が横行している前時代的な世界観で恋愛だけ自由とか設定がハチャメチャにもほどがある。そこからわかるのは、男性同士の恋が自然か不自然かなんてどうでもよくてBLと呼ばれる女子が喜ぶものを不必要に盛り込んだだけの雑なシーン。

個人的にアニメのような仰々しいしゃべり方が大嫌いなだけなので、そういった面でも評価は低いのだが、こうでもなきゃ客を呼べるコメディ作品を作られないのだとしたら映画産業も廃れたもんだと呆れる。

だからアカデミー賞は信用していないし、日本のメジャーな映画産業はつまらないと確信している。
この作品が笑えるか笑えないかの問題ではなく、これが映画であるのか、アカデミー賞ノミネートされる前にまずそこを問いたださないと。

ずっと何を見させられているのかさっぱりわからなかった。楽しむなら別にご自由にどうぞだが、これを好きな映画に挙げる程度の感性ならわざわざ映画を見なくてもよいだろう、なんてひどく悪く言ってみた。

ていうかせっかく埼玉とか千葉とか茨城とか県民性で対抗意識を燃やすんだったら、ご当地出身のアーティストの代表曲が国歌になってるくらいのシーンがあってもよかったのに、ここでも結局ひとつもポップミュージックがなくて、そのくせに小倉優子とか小島よしおとか現実のタレントは出てくるし、世界観の倒錯と、音楽の排除が相変わらず露骨でつまらないなと思った。

あ、でも出身地対決はおもしろかった。

星0.5。