コロナのせいで映画業界も散々で、映画館も根こそぎライフを奪われていく。大手シネコンくらいしか持ちこたえらる余力もなく、小規模なシネマはあからさまに悲鳴を上げている。そのせいで映画自体も話題になりにくく、大きな作品は今夏生まれることはなかった。そこにこのTENETが救世主になるべくやってきた。鬼滅の刃とTENETでなんとか映画を盛り上げないと。それは映画好きとしての切なる願いである。映画館が潰れられると困るのは映画大好きな私たちなのだから。

「ダークナイト」3部作や「インセプション」「インターステラー」など数々の話題作を送り出してきた鬼才クリストファー・ノーラン監督によるオリジナル脚本のアクションサスペンス超大作。「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描く。主演は名優デンゼル・ワシントンの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した「ブラック・クランズマン」で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントン。共演はロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、アーロン・テイラー=ジョンソンのほか、「ダンケルク」に続いてノーラン作品に参加となったケネス・ブラナー、そしてノーラン作品に欠かせないマイケル・ケインら。撮影のホイテ・バン・ホイテマ、美術のネイサン・クローリーなど、スタッフも過去にノーラン作品に参加してきた実力派が集い、音楽は「ブラックパンサー」でアカデミー賞を受賞したルドウィグ・ゴランソンがノーラン作品に初参加。

映画.comより

感想としては、案の定プロットに振り落とされたのが事実だ。予習もしていたし、割と頑張ってついていけてた気がしていたのだが、ごまかしごまかしで来てたらラスト30分くらいでそのボロがでてきて、全くついて行けなくなった。まるでマラソンで最初は全力で飛ばしたせいで先頭集団について行けていたが、パワーダウンする30km地点でどんどん先頭が視界から外れて、もはやコースすらもわからずヘロヘロになりながら走ってなんとがゴールテープが見えて「ああ今自分は何位でどこにいるのか…」と満身創痍で走っていると後ろから先頭にいたはずのランナーにぬかされ「お疲れ」と一言。そこで全てを察するのが自分、という感じ。よくわからないと思うが。

要するに時間が逆行できちゃうからやべえよやべえよって話で、それを駆使して戦いが進んでいく。ストーリーや解説は他の人に譲るとして、ここは素直に感想といきたい。

①IMAXがやべえ

IMAXは人生二度目、「ボヘミアンラプソディー」以来で、アクションものでの鑑賞は初めて。しかも久々の超大作を映画館で。はっきり言って、冒頭15分で泣いちゃった。響き渡る轟音、すさまじい音と映像移動。これぞ映画、と唸るほかない理想的な映像作品に嬉しくて涙がでる。今まで割とインディな映画を立て続けにみていて(大体Netflix)、その撮影方法に慣れていると、クリストファーノーランの、全世界規模にみられるための映画の撮影方法は新鮮で、王道かつダイナミック、小細工なし、圧倒的スピード感がたまらない。特に今作のジョン・デビッド・ワシントン演じる主人公の戦闘シーンのスピード感は度肝を抜かれる。戦い方が本気。あの、殴ってるのか殴ってないの変わらないフワフワパンチじゃなくて、相手を掴んで間髪入れず窓へガッシャーン!!!この痛快さはちょっと異次元だった。こんなスピード感のある戦闘長らく見てない気がする

②BGMがやべえ

ルドウィグ・ゴランソンは「ブラックパンサー」でも音楽を務めた人。当然期待して観に行ったのだが、きっちり期待を超えてきた。この低音。この迫力。切迫感。時間が逆行するとき、その予兆が起きるとき、すべてきにきちんと秒単位で音楽がつけられていて、文句ひとつでない。最高にかっこいいのだ。クリストファーノーランというとハンスジマーを思い浮かべるのだが(調べたらインターステラーもインセプションもハンスジマーだった)、今作はルドヴィグゴランソンを起用、それがばっちりハマった(ハンスジマーだったらどんな感じになったのだろうという想像も楽しい)。とにかくBGMを聴いてほしい。

③トラヴィススコットがやべえ

クリストファーノーラン作品にはめずらしく主題歌のある「TENET」。抜擢されたのはあのトラヴィススコット。多分日本にいて音楽興味なければピンとこないだろうけど、いま世界で一番聞かれてるミュージシャンの一人です。マクドナルドとコラボします。オンラインゲームのフォートナイト内で仮想空間のライブを敢行し、1200万人以上が同時アクセスします。もっとぶっちゃけちゃえば、米津玄師です。もうなにやってもランキングも話題も独占しちゃいます。確実に後世に語り継がれるスーパースターです(今のところ)。つまり超ビッグアーティストが満を持して映画の主題歌やってるのがやべえ。書下ろしがやべえ。で、曲がやべえ。「The Plan」って曲なんですが、これをエンディングでIMAXで聴くだけでお金払う価値があります。これを聞かずに退席する人ははっきり言ってセンスゼロです。映画をなめ過ぎです。嫌いならともかく。

とりあえず2020年これがあってよかった

映画館が締まってた時期もあるし、音楽イベントもクラブもなくなっちゃって、大きな音を聴ける空間ってなくなったんですよね。なによりそれが苦痛なんですよ。時には爆音で体中侵食されたいじゃないですか。TENETはそれを叶えてくれます。だから行く価値がある。壁をける音、飛行機が爆発する音、発砲音、ヘリコプター、ルドヴィグのサントラ、そしてトラヴィスのラップ。全てが完璧なのだ。これをIMAXで観て良かったと心から思っている。IMAXで見逃した~!って人は、ぜひ最高空間で見直すか、ヘッドホンでもなんでもいいのでシャットアウトして聴いてほしいんです。2020年にこういう作品があまりなかったからこそ、このTENETで補いましょう。ストーリーはね、もうある程度までわかればいいのよ!!何回見ても無理なものは無理!!!