生田斗真がトランスジェンダー役を演じて話題になった作品。

凄く丁寧に、じっくりと関係性や葛藤を描いた作品で、その細かさに納得。

ただ、それに伴っておもしろいかと問われればそれはまた別問題で、若干くどかったり面倒な描写やあざとさもちらついて、悪い邦画のクセがあったりもするのは否めない。それでもこのテーマに真正面から向き合って、作品として完成させたことには大きな意味がある。

なにより生田斗真の演技が素晴らしかった。昔から生田斗真には擁護的というか、演技も上手だなあと思っているので、今作でもその妙が光っていたことを明記しておきたい。

「かもめ食堂」の荻上直子監督が5年ぶりにメガホンをとり、トランスジェンダーのリンコと育児放棄された少女トモ、リンコの恋人でトモの叔父のマキオが織り成す奇妙な共同生活を描いた人間ドラマ。生田斗真がトランスジェンダーという難しい役どころに挑み、桐谷健太がその恋人役を演じる。11歳の女の子トモは、母親のヒロミと2人暮らし。ところがある日、ヒロミが育児放棄して家を出てしまう。ひとりぼっちになったトモが叔父マキオの家を訪ねると、マキオは美しい恋人リンコと暮らしていた。元男性であるリンコは、老人ホームで介護士として働いている。母親よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いを隠しきれないトモだったが……。

映画.comより

個人的には柏原収史が出演しているだけで大喜びではあるが、他にもミムラや田中美佐子と大好きな俳優が続々出てくるので満足度も高い。

女性らしい作法や佇まいって男性には中々難しく、そこもよくクリアしたなと思うほどのもので、多少過剰な女性らしさの演出はもしかしたらあったのかもしれないが、それもこみでトランスジェンダーの女性という視点が生まれて、意味があるように思えた。

なによりきちんとリンコだけの課題ではなく、母であるフミコの問題でもあり、彼氏であるマキオ、主人公のトモとその友達でもあり々悩みを抱えるカイの問題でもある。そのどれもが簡単ではなく、丁寧に描いているからこそ、一つの共通のテーマ「家族」と「社会」のつながりが浮き彫りになっていく。残酷な部分を隠そうとせず、ちゃんと描き切っているのはこの映画の最大の魅力だと思う。

特に主人公のトモを演じた柿原りんかはものすごい演技力だった。そしてとてもいい役に恵まれたし、きっとこの作品を通じて、幼いながらにLGBTQ+について学べたのはとてもいい経験だったのではと思っている。社会の不寛容さもきちんと演じきったからこそ見えてくるだろうし、柿原りんか自身の大きな糧になればいいなと勝手ながら願っている。