シュールなキャラクターと会話劇に頭おかしくなりそうな音楽が鳴る。というと観たい気も失せてしまいそうだが。
音楽がわからない自分にはこの「音楽」の良さは理解できなかった。いや、音楽をわかっているかどうかは関係ないかもしれないが、とりあえず試聴後のなんとも言えない空気は独特そのものだった。
ちびまる子ちゃんの世界観にもどことなく通ずるような平和な作画にあまりに怖らがられすぎてるチンピラ3人組。まぁその3人組の中でも主人公が圧倒的主導権を握っている。そんな彼らがバンドに出会いバンドを始めオリジナル楽曲で披露するために奮闘する話なのだが、このナンセンスさを受け入れて楽しめるか否かは人によって分かれるかもしれない。
ただ、監督の岩井澤健治は非常にこだわっており、7年以上もの制作期間を費やした大作であった。
――あらゆる面での意思決定を自分ひとりでというのは、確かに辛そうです。
岩井澤:7年も掛けたとか、手描きで4万枚も作画したから、すごくこだわりを持っているイメージを持たれがちですが、むしろ逆なんです。周りに頼める人がいたら全然おまかせしたいタイプなんですけど、いなかったので仕方なく自分でやるという方法論でした(笑)。
そうはいうものの、4万枚を書き上げこだわりがないなんて言わせない。渾身の作品である。
岩井澤:“間”を活かした演出を、多くの方が作品の魅力としてすんなりと受け取ってくれたのは、意外でもあり、嬉しくもありました。アニメーションって、動かすことが基本なので、“間”というものはまず存在しないんです。でも、「音楽」ではそれをあえて大胆に用いることで、物語的にもメリハリが出せるんじゃないかって考えたんです。セオリーからは外れるけれど、作品としてはプラスになるはずだと。
新進クリエイターインタビュー”岩井澤健治” 7年以上に及ぶ個人制作期間経て完成させた「音楽」
たしかに今作は非常に独特な無の間があり、そこがシュールさや、後の途切れのない轟音音楽へのメリハリに繋がる。たまに無音からいきなり効果音が出たりすると、パワーポイントで資料を作った時の感覚を思い出す。文字をででーんと映し出す時に流れる急な効果音。まさにあれ。シュールさが際立つ謎アニメ。