難波の感動ツイートについていけない
少し前に、Hi-STANDARDのメンバー、難波章浩がこんなツイートをしていた。
一息つけたところで、FAD横浜、昨夜のLIVEのことを少し報告しようと思います。
まず、開演前に対バンのDIZZY SUNFISTの時間はサーフとかダイブとか、人の上に乗っかる様にして盛り上がる行為を"禁止"って言葉を使って伝えさせてもらいました。自分のバンドのLIVEじゃないにも関わらず。①#NAMBA69
— 難波 章浩 (@AKIHIRONAMBA) May 27, 2019
かなり長いので詳しくは上のツイートを押してTwitterで続きを読んでほしい。
読んでいただけただろうか。
多くの同意のコメント、難波さん素敵なこと言うね!!という称賛の嵐。とても素敵な光景が広がっている。これがTwitterのあるべき姿だ。
と言いたかったのだが、正直何を言っているのか全く分からなかった。
全く分からなさすぎてびっくりした。途中で読むことを挫折したが、「意味が分からない」と言いたいがためになんとか必死に最後まで読んだ。そして結局分からずじまいだった。
翌日もう一度読み直したら何となく理解はできたので、ちょっとホッとしたのだが、あのスピード感でリアルタイムに称賛を送っていた人たちはとんでもない処理能力なのではと末恐ろしくなった。
後日、「難波はバイブス系なので彼のMCですらハイスタの二人も理解できてない時ありますよ。」と詳しい方から解説いただいて納得した。なるほど、みんな了承済みなのか。あまりにハイスタに馴染みない人間だったので、突然の暗号に腰を抜かしてしまった。
たしかに説明能力は人によって差がある。私の友人にも、時系列に沿って話すことができず、いつもとっちらかって意味不明な会話になる人がいる。でも私は理解できる。それはおそらく慣れているからだし、その人に興味があるからだ。
その人のクセやパターンを見抜き、自分で翻訳できる。だから同じバイブス系でも難波のは理解できずに友人のは理解できる。
「いい歳こいたおっさんがこんな言語能力とかまじかよ終わってんな」
はなかったことにする。
興味があるとちゃんと理解できるのに、あまり好きじゃなかったり興味が無かったりすると、突然理解力が落ちるのは人間の性か。
マイヘアのMCについていけない
思い出すのは2017年のRadio Crazy。当時付き合おうとしてた子と二人で行ったフェスで観たのはMy Hair Is Bad。マイヘア。その子が狂信的に好きで、一緒にグッズも並んだしライブも結構前列で観た。私はというと、彼らは比較的苦手なタイプだった。
苦手な部分はけっして”女子人気が高いから”といった理由ではない。彼らを軽視するつもりはないが、ああいう系のバンドは感情移入できないと死ぬ。死なない人もいるだろうけど私は死ぬ。
そして全く何言ってるかわからなかった。
始まって早々に長めのMCを入れるマイヘア。楽曲をやってはギターをポロンポロン弾きながら自分の過去について、バンドについて語る。語るのはいいけど単独でもないんだし初めて彼らを見た私にはなんの話かさっぱりわからない。そして大体声でかい。抑揚がなくてずっと叫んでる。文節に区切って叫んでる。文節で区切るから一文が長くて言い切った時には最初何言ってたか忘れる。
また曲が始まる。
あれ、おんなじこと言ってね?と感じる。
またMCが始まる。というかそれは曲が終わってからの事なのか曲間なのかすらわからない。またボーカルが必死に叫んでる。ウルウルきている女の子。まじかよ、やべえ、早よ泣かんとすげえ冷たいやつと思われる!と焦る自分。冒頭で同じ歳だと知ってそれなりに親近感はあるはずなのでそれを頼りにしっかり耳を凝らす。
あれ、これさっきも言ってたくね?と思う。細かく言えばそりゃもちろん違うんだけど、大方同じなのだ。つまりは「ずっとバンドやってきて色んな出会いと別れがあったんだ」って事を訴えている。
文節で区切る、と言ったが、区切らない時はとにかく喋るのが早い。まくしたてるように話すので今度はシンプルに聴き取れない。え?なんて?ってずっと頭の中でグルグルしてる。
隣見たらもう泣いてる。完全に出遅れた。なんとかしないと!と慌てふためく。
おばあちゃんが死んだ時のことを思い出してみる。
泣けなかった。こういう時、菜々緒だったら4分瞬きせずに涙も流せたのだろう。でも実は私は菜々緒ではない。てか当時菜々緒の4分瞬き知らないし。
結局40分、何を言っているのかよくわからないまま終わった。あの時の喪失感は計り知れない。一体何を見せられたのか。割とすぐ泣いちゃうタイプの人間なんだけどあの時は泣けなかった。でけえ声で同じことを叫んでたから。
難波とマイヘア
基本的に相手の言っている意味が分からなくなる時には理由がある。それは一文が長くなること。私の文章もあえて一文を長くしているが、それには細心の注意を払っている。主語と述語がごちゃごちゃにならないこと、どこの修飾語かはっきりさせること、話の視点を変えない事、これは必須である。
しかし難波もマイヘアも気持ちが先走る。思いが溢れすぎて、どんどん展開が進んでいく。大好きな人ならその熱量についていけても他の人間にはさっぱり伝わらない。別に好きでもない人に伝えるつもりがないならそれで構わないし、日本語の練習しろとかも思わない。
ただ結果としてその場に居合わせた自分も、ツイートを目にしてしまった自分も、確かに当事者なのだ。だからTwitterなんだし、だからフェスのライブのMCなのだ。あなたたちの信奉者ばかりではない場だったからこそ、この差は生まれたんだ。