1977年。イギリス皇室エリザベス女王が即位して25周年の日から始まる。冒頭でダムドの「New Rose」が流れる。76年デビューの彼らはまさにこの当時パンクな若者たちに熱狂的に愛されたバンドの一つである。
メジャーレーベルと契約することは死を意味すると説き、クラッシュも例外ではない。パンクバンドの演奏があるクラブに男三人でこっそり忍び込んだりと、77年のパンク少年たちが主人公の作品。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督が、「20センチュリー・ウーマン」のエル・ファニングとトニー賞受賞の若手実力派アレックス・シャープを主演に迎え、遠い惑星からやって来た美少女と内気なパンク少年の恋の逃避行を描いた青春音楽ラブストーリー。1977年、ロンドン郊外。大好きなパンクロックだけを救いに生きる冴えない少年エンは、偶然もぐり込んだパーティで、不思議な魅力を持つ美少女ザンと出会う。エンは好きな音楽やファッションの話に共感してくれるザンと一瞬で恋に落ちるが、2人に許された時間は48時間だけだった。2人は大人たちが決めたルールに反旗を翻すべく、大胆な逃避行に出る。オスカー女優ニコール・キッドマンが、パンクロッカーたちを束ねるボス的存在の女性を演じる。

そこでうっかり入り込んだ建物は、前衛的な恰好で奇妙なダンスをするコロニーと称する宗教団体だった。洗脳に近い場所で一人は狂ったように踊り狂い、一人は体を蝕まれる。その中で主人公のエン(アレックスシャープ)はコロニーに疑問を抱いていたザン(得るファニング)と出会い、エンが彼女にパンクを教える。そして自由とパンクを求めコロニーから脱出するのだ。

出会った翌日に、エンは自由へのメタファーとして、パンクの少年に問い詰める警察官を少年が体内に侵食してパンクに洗脳するイラストを紹介していたが、それは

途中で突然エンの母親にコロニーのボスが乗り移るシーンが登場し、この映画の雲行きが変わる。

パンクライブ演奏の後の残り40分は怒涛の展開へ。単なる70年代のパンク映画ではなく、21世紀の技術を駆使したサイケな世界観とユニバースを表現した唯一無二のトランス状態に。なのに後半15分の切なさのギャップはみもの。

日本でも音楽をモチーフにした映画はあるが、これくらいぶっ飛んでいて、自由な使い方をすればよいのにと思ってしまう。それくらいにやはり欧米の映画文化は成熟していると言える。

以下が流れた音楽である。

The Homosexuals – Soft South Africans

The Damned – New Rose

The Velvet Underground – I Found A Reason

Xiu Xiu & Mitski – Between The Breaths