長澤まさみがとことん嫌われにきていてる作品はあまり記憶がない。どこか憎めない、なんて部分は皆無で、とにかく自分勝手で生きる力が乏しい。

「日日是好日」「光」の大森立嗣監督が長澤まさみ、阿部サダヲという実力派キャストを迎え、実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得て描いたヒューマンドラマ。プロデューサーは、「新聞記者」「宮本から君へ」など現代社会のさまざまなテーマを問いかける作品を立て続けに送り出している河村光庸。男たちと行きずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子は、息子の周平に異様に執着し、自分に忠実であることを強いてきた。そんな母からの歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものがない周平は、秋子の要求になんとか応えようともがく。身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれ、その絆が、17歳に成長した周平をひとつの殺人事件へと向かわせる。長澤まさみがシングルマザーの秋子、阿部サダヲが内縁の夫を演じる。息子・周平役はオーディションで抜てきされた新人の奥平大兼。第44回日本アカデミー賞で長澤が最優秀主演女優賞を受賞した。

映画.comより

実話をもとにした映画だが、脚色部分も当然ある。それにしても、長澤まさみ演じる秋子の自堕落ぶりには全く擁護したいとも思わない。という一方で、社会が彼らを守る、少なくとも息子の周平(奥平大兼)はもっと早くに守ることはできた。簡単ではないが、父親がいて、母親の家族もしっかりしていたので、周平だけでもなんとかなったはずなのに、という思いが消えない。最後に母への愛を語る周平だったが、その真意はともかく、ゆがんだ愛と支配、洗脳というのは、こればっかりは他人が呪縛から解き放つにはあまりに難易度が高すぎる。

どうしても私はこういうのを見ると、だれが悪いとかこれはこうだと断罪できず、それぞれの事情を考えてしまう。そして、母親の秋子も救ってあげたい(ホストの遼は本当にどうでもよい。また阿部サダヲだよ。。。彼の演技はあまりに真を突きすぎていてつらい)と思ってしまう。それが社会の、人間の役割だとも思っている。ここはおそらく人によって大きく意見は異なるのだろうが。

映画のことに話を戻すと、子供時代の周平を演じた郡司翔、少年期を演じた奥平大兼ともに演技歴が少ないにもかかわらず印象的な演技をしていて、暗い映画をより一層辛気臭くした。ラストのBGMがあまりにでかすぎて耳ぶち壊れるかと思ったが、それ以外は非常にすぐれた作品だった。おもしろい。

あとは気になるのはこの映画にあたって演者へのフォローがどこまであったのか。。大森立嗣監督だけでなく、こういった社会の闇やバイオレンスな映画を撮るとき、役者にきちんと了承はとっているのか、特に子供にはきちんと意味を伝え、なんならこの映画を機会に知ってもらおうというくらいのフォローはあってもいいと思う。今映画界にも大きな変革期が来ているので、意に沿わない演出などがないことを祈る。