第二百九十九回映画と音楽のレビュー～わたしは最悪。～

公開日 : 2023年6月21日 / 更新日 : 2023年6月8日

最悪なのは選択が悪手だからか、人間として未熟だからか。自認しつつそれにあらがえない、どこかうつろげで思いのままに勉強をやまたり仕事を変えたり。そういう人って端からは「自由人」とかいわれる。「最悪」なんていわれることはないけれど、ときたまその自由さと身軽さが疎まれたりする。

「母の残像」「テルマ」などで注目されるデンマークのヨアキム・トリアー監督が手がけ、2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で女優賞を受賞、2022年・第94回アカデミー賞では国際長編映画賞と脚本賞の2部門にノミネートされた異色の恋愛ドラマ。30歳という節目を迎えたユリヤ。これまでもいくつもの才能を無駄にしてきた彼女は、いまだ人生の方向性が定まらずにいた。年上の恋人アクセルはグラフィックノベル作家として成功し、最近しきりに身を固めたがっている。ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、そこで若く魅力的なアイヴィンに出会う。ほどなくしてアクセルと別れ、新しい恋愛に身をゆだねたユリヤは、そこに人生の新たな展望を見いだそうとするが……。トリアー監督の「オスロ、8月31日」などに出演してきたレナーテ・レインスベがユリヤ役を演じ、カンヌ映画祭で女優賞を受賞。
映画.comより

原題が「世界で最悪な人」というなんとも禍々しいタイトルなのだが、おそらく本当に世界でナンバーワンなんてことはなく、ずっとその世界は彼女のなかでのナンバーワンの意味である。それにあらがえない。「他の人の方がいいかも」なんて思い出したら自分の世界は時が止まってしまうくらいに盲目的で邁進的。

この映画を見て思うのは、自分探しって自分でやるからいいのであって、相手を巻き添えにしていたら相手も困っちゃうよね、という至極まっとうな感想だ。