ディーンフジオカがディーンである理由とは

ディーンフジオカという名前を見るたびに藤岡ディーンだったら絶対売れなかっただろうなと思う。そもそもハーフでも何でもないただの藤岡竜雄なんだから何がディーンなのかもよくわからない(ニックネームらしい)が。でも思い出してみると、ケンブリッジ飛鳥オコエ瑠偉ダレノガレ明美もみんなカタカナが先だ。道端アンジェリカたちを除いては。ディーンつながりのディーン元気だって元気ディーンじゃない。なんだ元気ディーンて。下ネタかよ。


芸能界に他薦で入ったら”気持ち悪い”が第二候補に

彼の芸能界入りはジュノンボーイコンテストに応募したことから始まる。やはりここでもお馴染みの妹が勝手に応募したことになっている。ジュノンボーイの審査員は審査基準に姉妹の他薦であることが盛り込んでいるのだろう。ちなみにそのコンテストで披露したのがギタープレイで、曲目はディープパープルの「Burn」だったそう。もうここでもナチュラルなイタさがにじみ出ているのが非常に興味深い。

一人引きこもりの苦境を経て一本線がブちぎれたせいで世界各国をギター一本で回り、世界中に音楽とサッカーをして外人をドン引きさせたナオト・インティライミもさることながら、ディーンもなかなか香ばしい経歴を持つ。台湾のクラブでラップを披露したらスカウトされたとか契約を更新せずフリーでジャカルタに飛ぶとか、さすがの信念と行動力である。ここは素直にすげえって思う。
そんなきっと色々経験して豊かな俳優になったであろうディーンフジオカが日本に凱旋した時にウケた仕打ちは”ディーン様”だった。
「ディーンさんが今一番欲しいカディン(家電)は何ですか?」「ディーンさんはディン(どん)な食べ物が好きですか?」と天下のNHKから地獄のような質問攻めをされ、王子様キャラとして定着すると間もなく音楽活動にも王子様キャラが侵食する。

そんなディーンフジオカの検索第二候補は「気持ち悪い」「歌 ヘタ」「胡散臭い」「学歴詐称」「浮気」と前半はともかくなぜ後半そのキーワードで検索したのかよくわからないほどにネガティブワードが並ぶ。カタカナの名前はそれだけで若干のきな臭さを伴う。覚えやすさは抜群であるが実績がない間はなにかとアンチが付きやすい。そりゃ土屋太鳳は信頼感増すしタオ土屋にはエイブルのCMはこない。

Let It Snowで突きつけられる王座不在

音楽の話をしよう。ドラマのために書き上げたという「Let It Snow」は個人的にも色々と物議を醸した一曲だ。彼の王子様キャラはこの楽曲にまで影響を及ぼし、バーテンダーを演じたりローラーブレードで滑走したりと中々パンチのある映像が続く。

事務所の影響を大きく感じるそのスタイルは西内まりやを彷彿とさせる。西内まりやといえばスタイルも顔も抜群でスポーツ万能で歌も上手くピアノが弾けるまさに完璧な女性。おかげで彼女の夢の一つだったメジャーデビューが叶った。彼女のやりたかった壮大なピアノバラードはまずまずの出だしだったのだが、次第にセールスが落ち着いてくると事務所のテコ入れが露骨に散見されていく。最後にはチアの格好をして投げキッスを延々とさせられる始末。西内まりやは無事事務所の傀儡人形と化し、少し前には事務所からの独立報道もあるなど、やはり事務所との関係は良くないようだ。そりゃそうに決まってる。

ただ彼の活動から男性アイドルの行方を占うことができる。ジャニーズ一強とも言われた男性アイドルグループはスマップの崩壊とともに混沌とした時代に突入した。DISH//やXOXのような俳優モデルをアーティストに仕立て上げる方式、BOYS AND MENのような地元密着から羽ばたく地下アイドル方式などと多様化が進むが、ディーンフジオカのような”大人の色気”をウリにするアイドルはまだいない。マダムを虜にするのは演歌歌手と相場は決まっているからだ。彼の音楽活動の広がり方次第でいくらでも男性需要があることの活路を見出せそうなものなのだが、なかなか後がついてこない。

男性アイドルがなぜ女性アイドルほど盛り上がらないのかは散々語られている。
私としても
「ジャニーズの勢力が強すぎる」
「女性は一番を応援したがるので不人気に日の目が当たらない(初期セクシーゾーンのような悲劇が起きかねない=不人気から金をとれなくてビジネスが成立しにくい)」
「完全に顔主義が先行していて音楽的な深堀や競争原理が働かない=音楽として認知されにくい=顔ファン以外がつきにくい」
といった個人的な結論に達しているので、今更悩むこともないのだが、まだ”大人の色気枠”は空位であることをある意味で知らしめたディーンの功績は非常に意義深いと思う。

まとめ

難しく考えることはない。ディーンフジオカはいつだって私たちの思考を行き詰まらせてくれる。なんとなく名前をカタカナにして何となくひっくり返してなんとなく雰囲気のある曲をファルセットで歌い上げてなんとなく王子様に上り詰めた。結果として様々な芸能界の歪をあぶりだすことになったのだが、彼にはそんなの知ったこっちゃない。あくまで自己完結のそのスタイルに戸惑いつつも、音楽番組で彼が華麗に舞う姿を私たちは見届けなければならない。